僥倖

6月7日からの三日間は楡陵祭で北大構内は大盛況だったようです。一方私はこの三連休を利用して道北へ行って参りました。目的はイトウという魚、「幻の魚」です。そのように呼ばれる所以は、その個体数の少なさにあります。イトウは、産卵開始までの期間が長いうえに成熟年齢が遅く、産卵場所となる上流域までの移動距離が長いため、環境開発の影響をとても受けやすい魚です。かつては青森や岩手の某水系にも生息していたらしいですが、現在の南限は尻別川とされています(ただその数もかなり少ないと言われている)。そして釣りによる乱獲も個体数減少の要因の一つとされています。ですのでイトウを対象魚とする一方でその保護に努めている釣り人が北海道には多いようです。

 

6月6日木曜午後11時、札幌を出発して道北へと向かいました。これまでいろいろと北海道を回りましたがオロロンラインはやはりとても快適な道路ですね。今回の釣り場は湿原河川、一歩川に足を踏み入れるとズボズボと太ももあたりまで沈んでいく底なし沼です。加えて渇水の影響で普段なら水の中にある足場が露呈しており、普通の地面と勘違いして足を踏み入れてしまい足が抜けなくなることも多々ありました。

 

そんな状態で草や藪をかき分けながら釣りを始めて2時間ほどでその時は訪れました。竿が魚の重みでしなります。水面に白と赤の大きな魚体が現れ波紋を立てました。魚体の保護のため陸の上に魚を上げるわけにはいかないので急いで自らが川辺に落ちていき何とか魚体をつかみます。

83cmの立派なイトウです。初めて生で見たイトウです。そしてそれが自分の手で釣った個体。北海道に来る前から釣りたい、一目見たいと思っていた魚です。それが今、突然自分の目の前に訪れ暴れているのです。まさに僥倖、心からこの幸せに感謝です。 小野

 

 

2019年06月10日